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神のあわれみの使徒、聖ファウスティーナ
ラウレンチオ 小池二郎神父
回勅「いつくしみ深い神」
 現教皇様は教皇在位第三年の1980年に、二回目の回勅として、「いつくしみ深い神」を出されました。 この回勅は、旧約聖書にも新約聖書にも幾度も現れている神のあわれみについて取り扱い、 註の中ではありますが、回勅としては恐らく史上最初に、 ヘブライ語でなければ言い表しにくい愛の特長についても触れています。 すなわち、旧約聖書(ほとんどがヘブライ語で書かれています)には神のあわれみが、 時にはへセド、時にはラハミムで表されています。へセドは普通愛と訳されますが、忠実と訳されることもあります。 どういう愛かといいますと、神はご自分に忠実ですから、 神がおつくりになったものを最後まで愛されます。 しかし人間がこの愛に応えるときには、神はその応えに義理堅く更に深く愛されます。 このように神と人間の愛はどこまでも深まって行きます。もう一つの愛はラハミムといわれ、 「いつくしみ」と訳す方が適している愛です。 ラハミムはレヘム(胎)から来ています。 それは母の胎からにじみ出る愛を表しています。いわば子どもに対する無条件の母の愛です。 神様の愛にはこれらの両面があるわけです。愛とハート(心臓)は実際にもシンボルとしても深いかかわりがあり、 イエスの御心の信心はまさにこの関係の上に成り立っていますが、 そのイエスの愛を表現するために、ヘブライ語では「腹の底からの愛」という表現があったわけです。
 わたしは澤田和雄神父の翻訳で、この回勅を初めて読んだとき、 最初は、重大問題の山積している現代に、 教皇は今更なぜ神のあわれみを回勅という厳粛な手段で説くのかと少し不思議に思いましたが、 読んで行くうちに、無宗教と反宗教の要素に満ちた現代、 人の心を神に繋ぎとめるものは、神のあわれみに対する関心以外にはないのではないかと思うようになりました。
 しかし2000年、シスター・ファウスティーナが列聖される時のバチカンの週刊新聞で聖人のことを初めて知り、 現教皇ヨハネ・パウロ二世がポーランドのクラクフ大司教カルロ・ヴォイティーワであった頃の列福運動を知って、 回勅「あわれみの神」が世に出た理由がもっとよく分かったように思います。
いつくしみの使徒ファウスティーナ信徒の歓迎
 ここまでで、与えられている紙面の半分ほど使ってしまいましたが、 聖人(本名、ヘレナ・コヴァルスカ、修道名、マリア・ファウスティーナ)は、 1905年8月25日、グウオゴヴィエツというポーランドの村で貧しい敬虔な小作人の家に、 10人兄弟の第三子として生れました。 幼少の頃から、祈りへの愛と貧しい人への心遣いで目立っていたようです。 7歳で初聖体、そのときにはすでにシスターになりたい考えがありました。 三年間学校に行き、その後16歳まで、家計を助けるために三個所でお手伝いさんを勤めました。 1925年8月1日、いつくしみの聖母修道女会に入会。そのときにもらった修道名がマリア・ファウスティーナです。 1938年10月5日、33歳で永眠するまで、修道生活はわずかに13年、その間もクラコフ、 プロック、ヴィルニュスと三個所に住み、主な仕事は台所と庭の仕事と玄関番でした。 落ち着いていて、誰にも親切。見た目には目立たないシスターでしたが、 修道院で過ごした歳月は、啓示、幻視、隠れた聖痕、イエスのご受難の体験、二個所同時現存、 他人の心の透視、預言、神秘的婚約と結婚など、神からの特別の賜物で満ちています。 神、聖母、天使、聖人、煉獄の霊魂との関わりは彼女にとっては五感の世界との関わりと同様に自然なものであったようです。 彼女の内面生活を知るために大切なものは主イエスと聴罪司祭に命じられて書いたという日記です。 「賜物も、啓示も、天にまで引き上げられることもその他魂に与えられるどんな外的な恵みも、 自分の魂を完成させるものではなく、神と魂との親密な一致こそが、それを完成させます。」 (「日記」1107)主イエスはファウスティーナを、全世界に「神の慈しみ」のメッセージを伝える使徒と「秘書」に選ばれました。 「わたしは、今まで、わたしの民に雷を落とすために預言者たちを送ったが、 今日、わたしは全世界にわたしのいつくしみを伝えるためにあなたを送る。 わたしは苦しむ人類を罰しようとは思わない。わたしは彼らを癒し、 わたしの慈しみ深い心に引き寄せたい。」(「日記」1588)
 「あなたの聖人たちの一人一人が、あなたの徳の一つを特に映し出していますが、 わたしはあなたのいつくしみに満ちたあわれみのお心を現しとうございます。 わたしはあなたのいつくしみを賛美したいのです。 イエス様、どうかあなたのいつくしみを刻印のようにわたしの心と魂に印してください。 これがこの世においても来世においてもわたしの記章となります。」(「日記」1243)
神のいつくしみの礼拝
 ファウスティーナの使命は次の三つです。
 第一、神のいつくしみ深い愛について、旧約聖書と新約聖書に記されていることを、 全人類に思い起こさせること。
 第二に、全世界が必要としている恵みを願い求めるために、「神のいつくしみに対す る礼拝」の具体的な方法を伝えること。
 第三に、この礼拝の聖心、すなわち、神に対する絶対的信頼と隣人に対する慈しみによって、 教会を刷新すること。その具体化の一つとして、主は復活の第二主日を「神のいつくしみの祭日」とすることを望まれましたが、 2000年のまさにその日、ファウスティーナは教皇ヨハネ・パウロ二世によって、聖人の位に上げられました。
 聖ファウスティーナの霊性は大変に変わっています。わたしには珍しくさえあります。 しかしファウスティーナは21世紀を代表する預言者なのかもしれません。 わたしはこれから彼女の精神をもっと知り、参加したいと思っています。
 神のいつくしみの礼拝についてもっと詳しく知りたい方は、小冊子「神のいつくしみの礼拝」をご覧ください。 (発行所 カトリック ファミリーセンター 福岡市南区皿山4-14-27、電話092-541-6207、Fax552-5022)